近年はSNSに「インスタ映え写真」が連投され、そこに行ってシャッターを押せば誰でも同じ写真が撮れる時代となったが、そのような世の中でも野鳥撮影は決して我々を飽きさせることはない。

 

何故だろうか?

 

まず大きな理由として、季節ごとに色々な表情を間近で見せてくれる野鳥という存在があまりにも尊いということとが大前提だし、もっと言えば、スマートフォンのカメラなどで野鳥撮影はなかなかできないという事情もあるのかもしれない。

 

確かに「こんな野鳥がいたよ」という記録写真程度であればなんとかスマホでも撮れるかもしれないが、野鳥の持つダイナミックさ、俊敏さなどを写真に残そうとするならば、スマートフォンどころか、エントリークラスの一眼レフでもまだまだ厳しい面は多いだろう。

 

ハイエンド機で揃えたお金持ちたちでさえ、野鳥撮影を行う時は常に「どうすれば歩留まりが良くなるか」を追求し続けており、つまり、どれだけ良い機材を持っていても決して「シャッターさえ切れば誰でも撮影できる」という類のものではないことが伺える。

 

そもそも野鳥撮影には、一般的に300mm400mm程度以上の望遠レンズが必要となる。

 

ちなみに私が野鳥撮影に出かける時の機材は、SONYのα7iiiSEL100400GMを付け、一脚や三脚はなしで撮影している。

 

これだけで既に機材に50万円近い課金をしていることになるが、それでも野鳥撮影を行うならα9が欲しくなるところである。

 

いや正直に、リアルタイムトラッキングが欲しい。あと、オリンパスの鳥AF羨ましい。

 

レンズにも1.4倍テレコンを付けようか迷っているところである。

(この後お話しするが、F8まで絞って野鳥撮影することも結構あるので、開放F値が8くらいなら全然耐えられるかな・・・と最近考えている。)

 

ただ、現状の機材でも一般的な野鳥(つまり、カワセミなどの極端な野鳥以外)であればある程度追い込んだ作品も撮れそうな感じなので、この機会に、α7iiiでの野鳥撮影について少し考えてみたい。

 

ちなみに私が主に野鳥撮影を行っているのは、京都府立植物園と、京都御所の2か所である。

この2つは京都を代表する野鳥スポットなので、地元の人は是非行ってみてほしい。

 

野鳥撮影に一脚や三脚は必要なのか?

野鳥撮影の現場に行くと、必ずといって良いほど、迷彩柄のカモフラージュを施した大砲レンズを三脚に乗せた「ヌシ」みたいなおじさんが鎮座している。

 

まあそういったオジサンに限らず、野鳥撮影には一脚や三脚に使用が一般的だが、その上で改めて私は、普通の野鳥撮影であれば、一脚や三脚は必要ないと考えているのだ。

 

普段使っている機材がα7iiiSEL100400GMというかなり軽量級の装備であることが前提だが、これよりもう一段階重量が上がる「SEL200600G(重さは2.1kg超)」を使用した際も、やはり三脚や一脚は必要ないと感じた。

 

もちろんこれ以上重くなると、腕の力だけでレンズを振り回すのが難しくなってくるという側面があり、そういうケースでは仕方がないが、自分自身の機動力を保ったまま野鳥撮影を行う上では、なるべく三脚や一脚は使わないほうが良いと今のところの結論である。

 

そもそも野鳥はどの方向に飛んでくるか分からず、多くの場合、自分の頭上の木の上を自由に飛び回っているのだ。

 

つまり、俊敏にレンズを真上に向けて、ファインダを覗いたまま野鳥を追いかける・・・これが私が思う、一般的な野鳥撮影の最も歩留まりの高い方法である。

 

三脚や一脚のメリットがあるのも間違いないが、手軽にレンズを真上に向けたり、ローアングルで頭上を飛び回るヤマガラを撮影したりするには、どうしても一脚や三脚は邪魔なのである。

 

とまあ一脚や三脚についてdisったところで、ここから先は、α7iiiに特化した細かい設定の話をしていきたい。

シャッタースピードとF値、AF設定

非常に基本的な質問な気もするが、これは結構奥が深い。

 

シャッタースピードは基本的に1/2000~1/4000くらい、F値も「ガチピンできる範囲で最大限開く」というのが最適解だと思うのだが、それが結構難しい。

 

(もちろん写真表現として流し撮りしたり、被写界深度を深くしたりする場合は除く)

 

シャッタースピードは早くしたいが、当然ながらISOとの兼ね合いも大きいので、結局は「ブレないギリギリの速さ」を追求する場面が多いし、F値も「背景を最大限ぼかしたいが、それでは鳥の目にガチピンが来ない(歩留まりが悪い)」という場合には、少し絞ってやるほかないのである。

 

つまり、

  • どんな鳥を撮影するのか
  • 鳥の状態(動いているか止まっているか、地面を歩いているか)
  • 背景(どれくらいAFを持っていかれやすい背景か)

 

これらによって設定を細かく変える必要がある。

 

まずは、シャッタースピードとF値に着目して整理してみよう。

 

ただもちろん、なんの野鳥を撮るか決めておらず、ひとまず「野鳥の基本設定」として合わせているのが、下記の通りである。

 

マニュアルモード、ISOオート、AF-C(コンティニュアスAF)、シャッタースピード1/2000,F8

 

野鳥撮影者の中にはシャッタースピード優先で撮影している人も多いが、個人的には「撮影シーン」「鳥の種類ごと」の最適解を常に追求していきたいと考えている。

桜や梅の間を飛び回るメジロ(サクジロー、ウメジロー)

梅や桜の間を飛び回って蜜を吸うメジロ(所謂サクジローやウメジローと呼ばれるやつ)を撮影するときには、1/2000F8で撮影することが多い。

 

(ただし、蜜を吸っている僅かな間だけなら1/1000でも歩留まりは悪くない。ISOが厳しい時には1/1000にすることもある。)

↑この画像は、1/1000、F8で撮影している。

前面に桜がないうえに、木に一瞬止まった瞬間だったので、撮影が容易だった。

 

サクジローやウメジローで最も難しいのは、やはり桜の枝や花などにAFを持っていかれてしまうことである。

 

また、なんとか頑張ってメジロを捉えたとしても、きちんとメジロの顔(目)にピントがあっておらず、背中や首当たりにピントが来てしまっていることも少なくない。

↑こちらは1/1500くらいで撮影したメジロ。

羽を広げようとした瞬間?だからか、ギリギリ止まっている感じ。

そもそもメジロは動きが速いので、なかなかAF-S(シングルAF)で瞳にガチピンを持ってくるのは難しい。

そのために、F8まで絞り、首あたりにピントが来れば、顔も被写界深度内にぎりぎり入るくらいを狙うことも多いのである。

 

桜などを背景にメジロを撮影する際は、桜や梅の花がボケすぎるより、少しハッキリと写っているほうが写真として良い時もある。

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ランダムに飛び回るヤマガラ、シジュウカラ

メジロよりも動きが読みづらく、花の蜜などに置きピンすることも難しいヤマガラ、シジュカラの類は、枝にいる瞬間を狙うなら1/1000でぎりぎり、ISOに余裕があるなら1/2000にしたいところだ。

 

「置きピン」という言葉を使ったが、私は野鳥撮影では置きピンはほぼ使用しない。

 

カワセミなど特殊な野鳥ならともかく、基本的に広いフィールドで様々な野鳥を狙う場合、置きピンは歩留まりも下がるし、作品を追い込むのにも向いていないと感じるからだ。

 

ただ、ヤマガラやシジュウカラは枝に止まっているところからランダムに飛び回ることが多いので、場合によってはAF-Sではなく、AF-C(コンティニュアスAF)を使用して、とりあえず野鳥を追いかける、というケースもある。

 

そのあたりは、の場にいる野鳥の様子と相談しつつ使い分けているが、基本的にはAF-Sを主体として使用している。

↑飛び立つ瞬間のヤマガラ。これもうちょっとシャッタースピード早くしておくべきだった・・・

ジョウビタキ、セキレイなどのゆっくりな野鳥

ジョウビタキやセグロセキレイなどの動きが穏やかあまり動かない)鳥に関しては、フレキシブルスポットSとAF-Sを常に使用している。

 

シャッタースピードは1/1000F値開放。木に止まっている時間もかなり長いので、タイミング次第ではもっと遅くしてもOKである。

↑雨の中をスタスタと歩くセグロセキレイくん。

 

特にジョウビタキは、メジロなどの小鳥よりは一回り身体が大きいので、フレキシブルスポットSで目元にAFするだけの余裕が十分にあることが多い。

 

その一方、飛び出す瞬間のジョウビタキを狙うのであれば最低でも1/2000、できれば1/3000くらいまでは上げたいところである。

↑ボロボロの丸太の上にとまるジョウビタキくん撮って出し。いやあ可愛い。

 

ジョウビタキは同じ場所に大人しくとどまり、飛んで行ってもまた近くの場所に止まることが多いので、最初はなるべくスローシャッターで止まっているジョウビタキを撮り、満足したら、シャッタースピードを上げて躍動感あふれるジョウビタキの飛翔を狙うなど、目的別に設定を変えたほうが良いだろう。

 

↑ちなみにこれは斜めうしろからジョウビタキを撮影した写真だが、ピントが背中の羽に合っており、肝心の顔は被写界深度から外れてしまっている。

 

こういった写真を量産しても意味がないので、もし顔にしっかりとピントを合わせられない時は、いっそ被写界深度を深くしても良いと思う。

 

そのあたりは、自分の感覚と撮影したい写真のイメージと相談しつつ決めればOKだ。

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我らが憧れのカワセミ

これに関してはシャッタースピードは1/4000が基本とされている。

 

ただし、遠くの木の陰にいるカワセミを撮影する場合は、トリミング前提なので、ISOがなるべく下がるよう、なるべくスローシャッターで撮影するほかないだろう。

 

どうせ木の陰に隠れたカワセミにピントを合わせるには、MFしかないだろうし。

地面を歩くアオジ、アトリ、ツグミ、シロハラなど

1/1000である程度歩留まりは良い。F値は開放。

 

アオジなどは比較的大人しいし、ツグミやシロハラなども身体が大きく、小鳥ほど俊敏には動かないため、1/1000程度でも充分に撮影できることが多い。

 

ナッツのようなものを咥えながら地面を歩くアオジさん↑

 

地面と小鳥の場合、AFが迷ったり地面にAFがもっていかれることも少ないし、背景は可能な限り溶かしたほうが良い場面だと思うので、F値は開放で問題ないだろう。

 

良く晴れた日向等、ISOが十分に下がっているようであれば、シャッタースピードにもっと余裕を持たせ、1/2000くらいにしても良い。

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ISOはいくつまで許容できるのか?

野鳥撮影の下準備として、ISO感度をどこまで許容できるか、という点も自分の中で整理しておくと良い。

 

もちろん雑に言えばISOは低ければ低いほど良いだろうし、同じカメラで撮った写真を比べれば、ISOによってある程度の差は出るだろう。

 

それでも、Twitterに画像ちょっと載せるレベルなら、α7iiiなら常用限界である12800までいってもギリギリ耐える。

 

とはいえISO12800で撮った画像をさらにトリミングなんてしようものなら、さすがに小さなサイズの画像でもかなり厳しいものがある。

 

野鳥の毛並みを11本解像させ、臨場感ある写真を撮りたいなら、ISOはせいぜい5000程度までに抑えたいところである。

 

(個人的な感覚では、ISO40005000を超えたあたりから、解像感が落ちてくる気がしている。)

 

もちろんどんな写真を撮るかにもよるし、トリミングしないのであれば全然大丈夫なのだが、野鳥撮影だとどうしてもある程度のトリミングは避けられないということを考えると、「ISOあげれば良い」と安易にISO頼りにするのも、あまり好きではないのである。

 

(だからこそシャッタースピード優先にせず、マニュアルモードで撮影しているのだが)

 

野鳥撮影は奥が深い。

これからも色々と試行錯誤しながら、新たな発見があれば追記していきたい。

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